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墓石と墓地・霊園・墓所とは

供養近年の核家族化や埋葬に関する価値観の多様化などにより、先祖代々の墓という従来の概念にとらわれず様々なお墓の形式が注目されています。お墓は子々孫々末代に至るまで引き継いでいく一家の拠り所とも言える大切なものです。後悔しないお墓(墓石)選びをする為にも基礎知識をもっていると安心でしょう。また、墓地・霊園・墓所などという言葉を耳にすればお墓がある場所だとわかるでしょう。しかし、墓地や霊園・墓所の違いは何かと聞かれたら細かくわからないという方が多いかもしれません。
今回の記事では、墓石と墓地・霊園・墓所についてを詳しくお伝え致します。


墓石の種類とは

お墓

前提として、お墓については形や大きさに決まりはありませんから、予算が許す限り自由に形を決めることが可能です。しかし、霊園や墓地には決められた区画がありその霊園や墓地ごとに墓石施工に関するガイドラインが存在しています。墓石の形態は大まかに「和型墓石・洋型墓石・デザイン墓石」に分別することができます。

まず始めに和型墓石についてですが、江戸時代に一般化した伝統的な墓石でお墓というとこの和型墓石をイメージする方が多いのではないでしょうか。和型墓石には「石塔タイプ・五輪塔タイプ・宝篋印塔タイプ」の三つの種類があります。

和型墓石
●石塔タイプ
和型墓石の一般的なお墓。特に寺院墓地で多く見られ、献花を供える花立や線香立てが手前に設置されていることが特徴です。
●五輪塔タイプ
石塔タイプと比べて竿石が短いお墓。ただし、竿石が短い代わりに五つある自然界の要素のシンボルを設置されています。五輪塔は空海が発案したといわれており、真言宗で用いられるタイプで、浄土真宗では建てること一般的にはありません。
●宝篋印塔タイプ
100年以上前の先祖の供養として建てられた仏塔。

和型墓石は、大まかに分けると「芝台」「中台」「上台」「竿石」の四つで構成されています。次章のお墓の構造と各部分の名称で詳しくお伝え致します。
続いて洋型墓石ですが、洋型とはいっても日本で造り出された墓石ですから、和洋折衷型と考えることができます。近年増えている公園墓地や芝生墓地でよくみられる横長のお墓で、特徴としては彫る文字や墓石の形に決まりがないことが挙げられ、種類は「洋型二段型・洋型三段型」に分別することができます。

洋型墓石
●洋型二段型
洋型二段型は芝台の上に直接竿石が重なり二段になっています。
●洋型三弾型
洋型二段型に上台という石を挟み三段にした形式です。

上台の加工には大きく分けて二つあり、一つは垂直加工というもので、上台を斜面になるよう加工し水を流れやすくしたものです。水はけが良くなることで、汚れやシミを防ぐことができます。二つ目は亀腹加工で、上台を亀のお腹のように湾曲した曲線で加工したものになります。墓石の角を丸く加工することで墓石の角の割れ防止につながります。また、洋型には「オルガン型」という形態もあり、正面から見ると横長の長方形の形をしており、棹石が斜めに角度がついているためオルガンの形に似ていることからオルガン型と呼ばれています。
最後にデザイン墓石ですが、和型でも洋型でもない石材店ごとでオリジナルな工夫が施されたお墓です。一般的な形式にとらわれない個性的なデザインの墓石を求める方も増えてきた背景から、自由な形式を認める霊園などでは意匠的な墓石を見ることもできます。デザイン墓石の依頼は、フルオーダーかセミオーダーに限られています。

デザイン墓石
●フルオーダー
一からお墓のデザインを考えて作り上げる方法。
●セミオーダー
石材店で開発したデザインから選んで作り上げる方法。

デザイン墓石の特徴として、石材店によってはデザイン墓石に対応していないお店もあることもあるので注意が必要です。また、デザイン墓石は故人の個性を反映することが出来る、言わば故人様の為だけのお墓でもあるので、今後ご家族が同じお墓に入る可能性を考えると事前に話し合いを行い理解してもらう必要があるでしょう。
また、上記で挙げたタイプが主流とはなりますが、「宝塔・多宝塔」「無縫塔」などの種類もあり、神道の墓石の形態はまた異なるものになります。

和型墓石の構造
〇芝台
芝台とはお墓の一番下の部分で土台となる場所です。芝台はお墓の見栄えをよく見せるために使われることが多く設置しなくても問題はありません。
〇中台
中台とは別名、台石と呼ばれ家紋などを彫ることが多い部分です。中台は「地」に該当する部分で、財産維持の意味があります。
〇上台
上台とは和型墓石のメインとなる竿石を支える部分です。中台同様に、家紋を彫ることが多い部分でもあります。上台は「人」に該当し人望や出世の意味があります。
〇竿石
竿石とは家名や南無阿弥陀仏が彫刻される和型墓石のメインとなる部分です。竿石は「天」に該当する部分で家庭円満の意味があります。

また、お墓の構造に決まりはありませんが一般的な構造における各部分の名称を紹介します。

一般的なお墓の構造
〇墓誌
墓誌は埋葬されている先祖の戒名生年月日・没年月日など「銘」を刻むものです。功績などを刻む場合もあります。
〇納骨室(カロート)
納骨室は一般的に石やコンクリートで作られていて、芝台の地下に納骨室を作ったものや、地上に納骨室を作ったものがあります。納骨室の形式は地域によっても異なります。
〇花立
墓石に備え付けられている、供養をする時に花を立てるものが花立です。
〇水鉢
先祖に水を供えるための鉢のことで、墓石の手前に作られることが多いです。
〇香炉
線香を立ててお供えする「立ち置き型」と、寝かせてお供えする「くりぬき型」があります。
〇卒塔婆立て
卒塔婆を立てておくためのものです。様々な種類がありますが機能に変わりはありません。
〇蓮華台
蓮華とは蓮の花のことで、通常は竿石の根本に設置される場合が多いです。

石材とは

墓石の種類のうち代表的な和型墓石・洋型墓石・デザイン墓石についてお伝え致しましたが、使用する石材の種類や選び方についても併せてお伝えしていきます。
墓石の石材には、種類によって安価なものから高価なものまで数多く存在します。選ぶ際には「石の硬度・吸水率・キメの細やかさ・色」の4つの点を考え選定していく必要があります。

「硬さ」については、石材の硬度が高いほど劣化しにくいと言われており、硬度の高い石材は人気になっています。しかし、硬度が高いということは加工が難しく手間がかかるという事です。ですから、加工費用が高くなることを念頭に入れておく必要があります。続いて「吸水率」についてですが、吸水率も墓石の耐久性において重要なポイントです。吸水率が高いと、石材が変色したり苔が生えたりします。また、内部破壊が生じ亀裂が入る要因にもなってしまいます。そのため、墓石を選ぶ際には吸水率の低いものを選ぶ必要があります。「キメ」については墓石の美しさを表現する部分です。目がきれいに詰まっている墓石は、美しさだけに限らず、美しさを保ち続ける強さも兼ね備えています。キメの細やかさを判断するには、実際に石材店で石材を見るしかありません。最後に「色」についてはお墓の印象を左右する部分です。色によってお墓の見栄えも全く異なります。墓石に使われる色は、一般的に灰色や黒色の石材が多い傾向にありますが、近年では洋型墓石やデザイン墓石が増えてきた影響から赤色や青色といったように色彩に富んだ色も人気な傾向にあります。

また、石材には国産石と外国産石の違いもあります。国産石は、採掘量が少なく希少なため基本的に価格が高額な傾向にあります。日本の土で育っているため日本の気候に適用しやすく、どの石材であっても数百年に渡り使い続けられる安定した高品質といえます。外国産石は比較的安価で、日本に流通している低価格帯の墓石のほとんどが外国産石になります。様々な色のラインナップがありますが、材質の良し悪しの幅が広いので選ぶときは慎重に決める必要があります。
墓石は、石材の種類に限らず使用する量によっても費用が変わります。量が少ないと費用を最低限まで抑えることができますが、逆に多く石材を使ってしまうと費用がかさんでしまいます。また、花立や線香立てなどを複雑に加工することで、費用に差が生まれることも覚えておきましょう。

具体的な石材の種類には様々な種類が存在しますが、代表的な石材をお伝え致します。まずは「御影石」です。御影石とはお墓で使われる代表的な石材で、花崗岩・閃緑岩・斑レイ岩があります。

御影石の種類
花崗岩
瀬戸内海沿岸をはじめ茨城県や福島県・愛知県で多くとれる石材です。耐久性に優れ美しいのが特徴ですが、鉄分を含んでいるため錆が発生しやすいデメリットがあります。
閃緑岩
構成鉱物に無色鉱物の斜長石や有色鉱物の黒雲母などが含まれています。風化に強く光沢が出やすい特徴を持っていますが、日本での採掘量は非常に少なく、輸入されているものが大半を占めています。
斑レイ岩
構成鉱物は灰長石と呼ばれる白い鉱物と輝石類と呼ばれる黒色の鉱物からできています。宝石の原材料となる有色鉱物を多く含んでいるため、磨き上げると光沢が増し、深みのある黒色が特徴です。酸化しやすい成分がほとんど含まれていないため、長年雨風にさらされても変色や劣化しにくい特性を持ち合わせています。

上記で説明した石材以外にも、大理石・大谷石・安山岩などが使用されています。実際に墓石を選ぶうえで重要なのは、費用・耐久性・立地場所の環境・イメージです。以下でそれぞれについて詳しくご紹介致します。

墓石を選ぶ際のポイント
費用
墓石費用は、石材の種類や使用する大きさによって変わってきます。相場は約150万円~350万円程度と言われていますが一概には言い切れない為、石材店の中には相場以上の費用を請求する悪質なお店も存在するので、複数のお店を比較検討して慎重に決めることが良いでしょう。
耐久性
石材の耐久性を考えることも大切なポイントです。墓石は常に外気にさらされているため、年月を重なるごとに自然に劣化してしまうものです。可能な限り劣化を遅らせるためには、耐久性の高い石材を選びましょう。
立地場所の環境
墓石は立地場所の環境によっても耐久性や見た目に影響が生じます。特に天然石で作られた墓石は影響を強く受けやすく、墓石の劣化や石材が割れてしまう可能性も考えられますので立地場所の環境を踏まえたうえで石材選びをする必要があります。
イメージ
お墓の見た目は、墓石の大きさや・形・色などによって大きく左右されます。選ぶうえでまずお墓全体のイメージを明確にしておくことが大事になります。

墓地・霊園・墓所の違いとは

墓

それでは早速、霊園・墓地・墓所の内容について解説していきます。

霊園
霊園とはお寺に属していない墓地のことを指します。
霊園墓地と呼ばれるケースもあり、
一般的には広大な敷地に公園を併設したり、
独自の設備を設置したりしている傾向にあります。
広義では公園と墓地を含めて霊園という表現されることも。
大きく分けると民間(民営)霊園と公営霊園の2つです。
法律で霊園については特に定義されていません。
墓地
墓地とは、「墳墓を設けるために、墓地として都道府県知事の許可を受けた区域のこと」
と墓地、埋葬等に関する法律第2条5項では定義しています。
法律的にいうと墓地といった場合は、
霊園墓地と寺院墓地を指すことになる広義の意味になります。
墓所
墓所とは、霊園墓地や寺院墓地の中にあるお墓を建てるための区画のことです。
法律で墓所については特に定義されていません。

これらの言葉には広義か狭義かという違いがあるという事になります。簡潔にイメージとしてお伝えするとすれば、墓地の中に霊園墓地と寺院墓地があり、その個別の区画を墓所と呼ぶという認識をして頂くとわかりやすいかもしれません。

墓地・霊園の種類とは

先にご紹介した通り、墓地の中に霊園墓地と「寺院墓地」があり、霊園墓地には「公営墓地」「民間・民営墓地」の種類があります。「公営墓地」「民間・民営墓地」「寺院墓地」それぞれ運営形態やサービス内容などによって違いがあります。ここからはそれぞれの違いについてご紹介いたします。

公営霊園
公営霊園は、都道府県や市町村などの自治体が経営主体となって運営管理まで行っています。
公的な霊園であるために宗旨や宗派に縛られることもありません。
倒産リスクが非常に低いという点が利用者の安心にもつながっています。
ただし、公営霊園を利用するにあたってはその「自治体に住民票があること」が申し込みの条件になっていることが多く、対象の自治体に住民票がなければ申し込みができないことがあります。また、申し込みができたとしても、公募を上回った際には抽選となってしまうため、運も必要という点があり注意が必要です。
民間・民営墓地
民間・民営墓地は、経営主体が宗教法人や公益法人などで、運営管理は石材店などの民間企業が行います。
宗派や宗旨が限定されることはほぼ無いので希望するお墓の形式を選びやすい傾向にあります。
広い敷地を有しているほか、霊園内の設備が充実していることが多いのが特徴といえ、明るくきれいな雰囲気の霊園が多い傾向にあります。
寺院墓地
寺院墓地は、お寺の境内地にある、いわゆるお寺の敷地内にあるお墓を指します。
寺院墓地の経営主体と運営管理は共にお寺が行っていますから、手厚い供養を受けられるという点が特徴となります。
仏教信仰が強い方に最も選ばれる傾向にあります。
お寺の檀家にならなくてはならないケースが多く、宗旨・宗派はそのお寺が信仰する宗旨・宗派に限定されるという一面もあります。

また、上記の他にも「みなし墓地」というものがあります。みなし墓地とは、墓地、埋葬などに関する法律が施行された以前からある墓地のことを指します。法律では、墓地を経営するために都道府県知事の許可を得なければならないとされています。しかし、法律の施行前から墓地やお墓は存在していましたから、これらの墓地の取り扱いは「第26条 この法律施行の際現に従前の命令の規定により都道府県知事の許可をうけて墓地、納骨堂又は火葬場を経営している者は、この法律の規定により、それぞれ、その許可をうけたものとみなす。」とされています。最後のみなすの言葉から「みなし墓地」と呼ばれているのです。みなし墓地に該当するのは、古くからある共同墓地や個人所有の土地に建てられたお墓などです。許可を受けていないからといって、行政がそこにあるお墓を撤去していくというのは現実的にはありえません。現存のお墓へのお参りは問題なく行えますが、新たに墓地を再開発するとなると許可を取り直さなければならないでしょう。

お墓を建てるまでの流れとは

墓地・霊園探しをして実際にお墓を建てるまでに大切なことは全体の流れを押さえておくことです。ここからはお墓を建てるまでの流れを簡潔にお伝え致しますので参考にして下さい。

  • ご自身の宗旨・宗派に合った墓地・霊園を選ぶ
    墓地や霊園を選ぶ際には、まず宗旨や宗派に合った先を選定することが大切です。特定の宗旨・宗派に属されている方はご自身の希望する供養方法が行える墓地・霊園なのかは非常に重要です。また無宗教の方の場合には宗旨・宗派にこだわらない墓地や霊園を選びましょう。先にもお伝えした通り、墓地・霊園といっても種類がありますので、複数箇所を実際に見学してみることをおすすめ致します。
  • 永代使用権(墓所使用契約)を結ぶ
    宗旨・宗派に合った墓地もしくは霊園の選定が済んだら、永代使用権(墓所使用契約)を結びます。お墓を建てる土地は寺院や霊園から借りることになり、法律でもで墓地以外での区域に納骨はできないことがうたわれており、寺院・霊園を問わず契約が必要になります。墓地管理者と利用希望者の間で契約を結び、永代使用料を支払うことではじめて墓地を利用するための権利を得ることになるのです。なお、墓地を借りるときに支払う費用である永代使用料は、途中で利用を解除しても戻ってこないことを認識しておきましょう。
  • 石材店を選ぶ
    契約が済んだ後には、お墓の建設を頼む石材店を選びます。この際には複数の石材店から選定することをお勧め致します。その理由は、お墓の建設は一般的な費用として相場とされるものはありますが、明確な金額がある訳ではありません。複数の石材店から同じ条件で見積もりを出してもらうようにして比較して選びましょう。ただし、費用が安ければ良いということではありません。知識が豊富な石材店を見極める必要がありますし、格安の墓石販売をうたっているような業者でも実は仲買人だったというケースもありますので注意が必要です。また、墓石のデザインをこだわりたい方などは、希望の対応をしてもらえるのかという点も確認する必要があります。
  • 墓石を発注する
    石材店を決めたら、墓石の具体的なデザインを固めていきます。墓地や霊園によっては墓石の大きさや形が決まっているケースもありますので、規約の確認も忘れないようにしましょう。墓石のデザインが決まったら、石材店に正式に墓石の発注をします。契約の際に手付金として一部代金を先払いし、工事が完了したら残りを支払うことが一般的ですから、事前に契約書の内容をよく確認しましょう。
  • 施行工事
    お墓を建てるには区画の基礎工事や墓石の切り出しや設置などで一般的には概ね2~3カ月程度かかるとされてます。納骨式などを執り行う日取りが決まっている場合には逆算して間に合うように石材店へ発注する必要があります。お墓の建設後には注文通りに仕上がっているか、ひび割れや汚れなどがないかを確認しましょう。
  • 納骨
    仏教の場合であればご遺骨をお墓に納骨する前には司式者に読経をあげていただき、開眼供養を執り行います。開眼供養を執り行うことによって墓石が参拝対象となります。

お墓に関する知識は経験がある方でもつかみ難い点が多いかと思われます。お伝えしてきた、墓地・霊園・墓所などの言葉の意味の違いがわからないという方が多くいらっしゃいます。知識を備えておくことでいざという時に家族の皆様、故人様の希望に近い場所探しからお墓建立まで執り行うことが出来るでしょう。
お墓は、ご先祖様とご自身とのつながりを維持するだけではなく家族という横のつながりも維持してくれる・故人を思い出し今生きている家族の絆を確認させてくれる大切な場所です。近年では死生観も変わってきていて、葬儀のかたちのみならず、今までの伝統的なお墓のあり方とは別の方法を選択する方も増えてきています。どのような方法で埋葬するにしても、そのお墓を選んだ意味をしっかり自分なりに考えて故人を偲ぶことが大切です。

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